2月3日
私は、現在、とれなかった有給分をマイナスすると、愛知県最低賃金にも満たない金額で働き続けるパート6年目の専門職の女です。子どもが高校に合格する少し前から社会で第2の人生を模索し始めた、というありふれた女の一人。それまで子どもの入試を塾なしで家庭で支えることに邁進、こういう考え方をする女もわりとありふれた存在ではないでしょうか。
そんな、ありふれた平凡な女の私が、これから、6年誠実に勤め上げたブラック企業に、すでに口頭で却下された有給を、何回も申請していくつもりなのです。何を血迷ったのか、と同僚は返します。どうせ何やっても無駄だよ、とも言います。ところで今のところ会社を辞める気はありません。同僚たちは心根の優しい人ばかりで、交流が楽しいからです。そりゃそうかもしれません。ブラックをやめずに何年もいる、その事自体が優しい、優しすぎる性格を物語るのかもしれません。ちなみにやめていった人は数しれず。5年で社員含めて半分は入れ替わる恐ろしい会社。上層部の人たちは、はいさよならと言ってそうな涼しい顔で最後の挨拶に無言で頷く有り様です。何度もみてきました。
辞める気がないのに、今後やめさせられる事態になるなら、それはそれで誰かの参考になると思いますし、ブラック企業と聞いて大概の人が思い浮かぶように口の汚い経営者なので、堅実で真面目に業務に尽くしてきたこの私に、何を言ってきても不思議ではありません。
というわけで、私はありふれた底辺時給の女らしく、わなわなと震えだしました。そんな年で転職も容易にできねえだろ!文句言わずに底辺で働いてろ!という声が、実際に言われもしないのに脳内に鳴り響くからです。ですが、ちょっとだけ平凡じゃない第2の私がいるらしく、やったろーじゃないの!とワクワクしているのです。困りますね(笑)このとんでもなく元気な第2の私にふりまわされそうな平凡な女の私が、恐ろしさのあまり眠れない昨夜、ふいに思い出したこと。
それは、アウシュビッツでのこんな話です。
つらい監獄生活に耐えた人の特徴は、監獄を出たあとの生活をリアルに思い描き、毎日同じことを繰り返していた人、というのです。イチローが毎回同じジェスチャーをしてバットを構える、という話を思い出しました。他にも、偉大な人たちがいつも同じ時間に走る、同じ時間に何かを必ずする、という話は頻繁に聞きます。
あ、そうだ
私には、まだ手つかずのドメインがありました。
誰かが見ているかどうかなんて関係なく、リアルタイムに書いていこうと思いました。だってアウシュビッツでは観客は誰もいないのです、ただ毎日何かを自分のためにしていた人がいただけです。明日死ぬかもわからないのに、それだけで精神を病まずにいられたというのです。
私は自分でも思うし人にも言われる素直すぎる女、毎日とにかく書いていこうと、支給されてもいない有給を使って書き出しました。あ、もちろん一応事前に言ってあります。有給も口頭のこの会社に書類を書く意味はもちろんあります。後にちゃんと効力を持つといいのですがね、いまのところ半信半疑でしかありません。このブラック企業監獄で、明るく楽しく素敵な同僚とランチなんかしながら、一人で戦っていこうと決意しました。同じような方の目に留まれば幸いです。